“チャイナなう”編集室 当サイトへの広告掲載に関するご相談は編集室まで!

私立学校が債務危機で経営破綻


2012年2月13日付け、中国青年報

温州債務危機

2月3日、温州立人教育グループによる債務危機事件は法的処理のプロセスに突入した。犯罪行為の疑いで、董順生会長を始め6人が温州市警察に拘束された。

この事件は、民間企業の債務によって引き起こされた債務危機として注目された。立人グループ取締役会の担当者によれば、グループ内部の統計で、負債総額は約22億元(約280億円)である。しかし、一部の債権者の委託代理人であり、北京振邦法律事務所弁護士林才紅氏の概算によれば、この事件で民間企業による融資金額は70億元(880億円)から80億元(1000億円)に達し、債権者数は延べ5、6000人に達するという。

この事件は違法にお金を集める事件として全国最大規模である。しかしながら、この事件は、昨年より温州民間企業の間で起きた一連の債務危機「ドミノ倒し」のひとつに過ぎないが、金額は数十億元に上ることから、温州で起きていた民間企業の借金経営の狂乱振りを人々に改めて示した結果となった。別の角度から見れば、この事件は中国における民間企業の存続危機を曝け出した。

■カネがカネを生むのは、もう過去のこと

事実、立人グループの債務危機はいまに始まったわけではない。

2011年10月31日、立人グループは既に自力で債務を返済できないことを公表している。当時、立人グループの責任者は債務危機の原因として3つを挙げた。一つ目は、最近のマクロ的緊縮政策の影響で、当該グループが携わっている不動産物件が売れなくなり、投資した資金の回収が困難になった。二つ目は、当該グループが内モンゴルのアルタス地方の石炭鉱山に投資したが、石炭の生産制限政策により、予測されたリターンを得ることができなくなった。三つ目は、世の中がお金に対してシビアになっており、丸々10ヶ月、当該グループは1銭も借りることができなかった。

立人グループは2003年に設立され、その前身は董順生氏など数人が1998年に創立した泰順県育才高校である。董順生氏は6人の株主とともに、それぞれ10万元(約120万円)を出資し、国営の陶磁器工場のオフィスを借りて事業を立ち上げた。

公開資料によると、本部を温州市泰順県に置いた立人教育グループは教育機関と名乗っていたが、実際は多角経営を行っていた。事件が明るみに出る前、当該グループの傘下に36の学校、幼稚園、石炭鉱山及び不動産開発会社があり、内モンゴル、江蘇省などに地域に分布し、経営範囲は教育関係の投資、不動産開発、鉱山事業投資など広範囲に及んだ。

地元の人によると、立人グループは10年以上に渡り、泰順県で資金を集め、学校を経営していることは、地元の人なら知らない者はいないという。一方で、立人グループは民間から高い金利で資金融資を受ける歴史も10年以上になる。

泰順県育才高校を創立した年、入学した学生は220に達し、まあまあのスタートであった。”恐らく、田舎の学生は閉鎖的な学校教育になじめず、同時に民間企業が学校を経営することに対する世間の懐疑心などから、2年目の新入学生は160人に減り、学校経営は赤字となった。”立人グループ取締役会役員である雷小草氏はこのように振り返る。この時から、董順生氏は民間からの借入の道に足を踏み入れた。

その時の借金は大した金額ではなく、主に学校経営に投入した。その後、学校は高い報酬で全国からレベルの高い教師陣を揃え、毎年数十名の学生を地元名門の温州高校に転入させた。

浙江省と福建省の境にある泰順県は、浙江省の中で開発が遅れている県のひとつである。2010年の県全体のGDPは40億元にも及ばず、育才高校が創立される前は、毎年泰順県から温州高校に進学できる学生は僅かであった。

高い進学率で、育才高校は少しずつ地元で有名民間学校として知られるようになり、民間資金に支えられて、学校は瞬く間に規模を拡大した。その後、董順生氏は相次ぎ育才中学校、育才小学校と育才幼稚園を創立し、2003年に温州立人教育グループを設立した。

学生からの授業料と少しの借金だけでは、グループの経営を維持することができなくなったので、董順生氏は2005年から新たな打開策を探り始め、最終的に多角経営に舵を切り、次々と不動産事業、建設事業、鉱山開発事業などに参入した。

債務危機が起きるまで、立人グループ傘下の学校、不動産、鉱山などの企業数は36社に拡大し、地域分布も、浙江省、江蘇省、上海市、北京市、湖南省、湖北省、河南省、内モンゴル、貴州省などに及んだ。

学校の知名度と事業拡大による増益で、董順生氏は泰順県の「スター企業家」となり、2006年に浙江省人民政府教育基金会より”緑葉賞”を授賞した。それにより、多くの地元の人々が喜んで立人グループにお金を貸すようになった。

”利益率の高い事業に投資することで利益を確保し、それを教育事業に投資するビジネスモデルが確立された。”立人グループの内部関係者によると、董順生氏は、当初企業は利益を得たが、これらの利益は主に学校経営に伴う負債と長い間に積もりに積もった利息の返済で消えたことを認めているという。

泰順現地の債権者によると、彼らが立人グループに貸したお金の利子は、2003年は年率12%で、2006年は24%から30%、2008年の金融危機の時は48%から最高で72%にまで達した。

泰順県政府の職員は記者に対して、多くの教師、行政機関幹部、公安関係者も立人グループにお金を貸したと漏らした。県全体で少なくとも数千人が立人グループにお金を貸している。

危機発生後、育才高校の90%以上の教師が巻き込まれ、多い人は400万元あまり、少ない人でも数十万元の損失を被った。育才高校の教師は、カネがカネを生む日々は一瞬で夢に終わったと嘆いた。

債務者は少なくとも5、6千人立人グループの債務と資産はどのぐらいあるのか?部外者の間で憶測が飛び交っている。

立人グループ経営陣が発表したデータによると、当該会社の内部統計では、債務総額は22億元であり、大部分は民間からの借入である。直接立人グループに貸し出した債権者は約1000人、間接的な債権者を入れると約2000人であり、一方、企業の総資産は50億元から60億元ある。

部分債権者の委託代理人である北京振邦弁護士事務所の弁護士林才紅氏によると、立人グループが10年間に渡り民間から借り入れた元金と利息が数十億元が残っていることから、立人グループは民間から借り入れた融資総額は70億元から80億元に上ると考えられる。”この案件は、違法な資金集め事件の中で最も金額が大きい案件である。”と林才紅氏が述べた。

ある財産整理に携わる内部者は、”立人グループの債務は最低でも80億元、関与した債権者は6000人ぐらい。”と吐露してくれた。
泰順県の関連部門によると、当該案件に関わる借入金総額と人数は統計中であり、正確な数字はまだ分からないという。しかし、泰順県の幹部も、債務危機に巻き込まれた人数は少なくて5、6000人に上るとの見解を示した。

2011年10月31日、立人グループは債務返済能力がないことを公表して以来、11月5日、立人グループは資産整理の3つの方法を公表した。その1、債務を株に転換する。債権者は債務を当該グループ傘下の上海意邦置業有限公司、内モンゴル・アルタス誠意炭坑の株に転換する方法。その2、分割返済。債務を5年に分けて返済する方法。毎年元金の20%を返済し、最後の年は元金と利息を返済する。利息は銀行の融資金利を適用する。もし所定期間内に返済ができない場合、資産を売却した返済に当てる。その3、当該グループの子会社である江蘇吁抬佰泰置業有限公司が建設予定の物件を譲渡する方法。

前述の経営陣によると、債権者は上記3つの方法を組み合わせて選ぶことができる。その中、江蘇吁抬佰が建設する「小太湖国際新城」という不動産物件は、総面積71万平方メートルで、2014年7月に竣工予定であり、販売総価額は約23億元である。

しかし、2012年2月3日、立人グループの会長である董順生は強制捜査を受け、当該グループは債務と資産の組み替えが失敗したと表明した。

立人グループの資金は主に民間からの借入であり、融資方法が偏っていた。”雷小草氏は、泰順県では、銀行からの借入は困難で、民間からの借入が手軽であったと説明した。10年あまりの手探りと努力の結果、当該グループの経営環境は徐々に好転し、董順生氏は2010年末の取締役会で2011年の経営目標をこう定めた:石炭生産量は500万トンから600万トン、不動産物件の販売面積は50万平方メートル。

しかし、2011年初めより、マクロ的な引き締め政策と不動産購入制限政策、不動産建設制限政策などの影響で、立人グループが手掛ける多くの不動産物件が販売不振に陥り、資金回収ができなくなった。内モンゴルでの石炭鉱山への投資も、省エネとCO2排出量規制、石炭生産制限などの政策で、予定された投資リターンを得ることができなくなった。更に、温州地域の金融危機が加わり、資金調達が更に困難になり、民間債権者から繰り上げ返済を迫られるなどの影響で、2011年6月、7月の間、立人グループの資金がほぼ枯渇してしまった。

この苦境から脱出するため、董順生氏は年率48%、60%、72%、あるいはそれ以上の高い利息を提示し、より多くの資金を調達しようとした。しかし、この無謀なやり方は失敗に終わった。

当初、泰順県政府は立人グループが民間からの借入に関わる紛争処理を3つの処理段階を確認している。最初は企業による自助努力。次は政府による支援、最後は司法による介入。

2011年12月、一部の債権者は最終的に司法に訴える行動に出た。

■地元政府が債務危機の処理に介入

2012年2月8日、泰順県政府は立人グループの22項目に渡る資産整理リストを公表した。この22項目の中に、10項目の蘇州、上海、温州などで建築中の不動産物件、6項目の内モンゴルと貴州省にある石炭鉱山事業、泰順にある育才高校、北京と大連にある幼稚園、野菜栽培農地と家禽養殖基地が含まれる。

泰順県政府は同時に、債権者の合法的な権利は法に基づき保護すると表明した。温州立人教育グループ有限公司の資産は全て政府によって差し押さえられ、如何なる企業や個人が如何なる方法で移転、隠蔽、処分することはできない。このほか、全ての債権者の債権を法に基づき記帳し、審査とチェックを経て、処置方法を決める。

泰順県宣伝部の責任者によると、立人グループの主な資産を公表し、その目的は社会と各業界が資産に関わる情報提供を促すのが狙いである。泰順県政府は既に現地2社の仲介企業に委託し、資産整理の作業に着手している。

調べによると、目下、現地政府は21個の監督連絡チームを編成し、債務危機の監視と処置に全面的に介入している。いま監視管理が行われている項目には、企業資産の保全、資産の評価、学校運営の安定化、社会混乱の鎮静、被害の影響が特に大きい債権者に対する支援措置などが含まれている。債権者登記作業は2月15日に正式に開始される。

ただ、債務返済案に含まれる22項目の中、内モンゴルの石炭鉱山は2011年11月28日に生産停止した後、12月5日に内モンゴルの現地債権者によって強制的に差し押さえられている。12月28日、全ての財務会計資料は債権者代表に引き渡された。よって、これらの資産は泰順県の債権者にとって、ないに等しい。

立人グループが所有する内モンゴルの露天石炭鉱山の採掘期間は2011年1月10日から2012年4月17日で、予想採掘量は60万トンである。当該石炭鉱山の採掘期間は残り僅かであり、先日の寒波で生産停止に追い込まれ、2012年3月に生産を再開する。

立人集団は2011年3月に、内モンゴルの石炭鉱山の23%の株式を取得したが、それによってどれぐらいの利益になるかは、まだ確認されていない。立人集団は満世集団と株譲渡の協議に入った時、6.7億元を出資すべきところ、既に3.9億元が支払われ、残り2.8億元はまだ支払われていない。この状況の中、立人集団が最終的にどれぐらいの利益を手にすることができるかは、今後注目して行く必要がある。

■民間融資のルール策定と透明化は喫緊の課題

調べによると、現地公安部門は、民衆から立人グループが民間から資金を集めているとの通報を受け、董順生氏など数名に対して強制刑事捜査に踏み切ったが、それ以外の刑事捜査は行わない方針だ。立人グループが民間からの借入は高利貸しに該当するのか、違法な資金集めに該当するかは、まだ決まっていない。

あるウォッチャーは、去年10月31日に立人グループが債務返済を停止すると発表して以来、強制刑事捜査に踏み切ったことは、この民間融資に起因する危機は、行政指導に基づく自力債務整理から司法介入の段階に移ったことを意味すると分析している。

改革開放30年あまり、我が国の金融市場は完全に開放されていない。中小企業、特に民営企業が正規の融資ルートからの資金調達は非常に困難で、仕方なく別の道を探るしかなかった。”董順生は典型的な創業失敗者であり、高利貸しの泥沼にはまり、最終的に取り返しの付かない犯罪の道を歩んだ。”

取材に対して、多くの経済界や企業界の識者は、中国の民間金融と地下金融の問題がどんどんエスカレートしていると嘆く。このことは、いまの金融体制は経済発展に追いついていないことを示している。金融体制を改革し、民間融資のルール策定と透明化は喫緊の課題である。

 

ソース:http://news.sina.com.cn/c/sd/2012-02-13/051823922962.shtml

チャイナなう編集室